昨日は新一年生達のための入学式。




 そして今日は二年生、三年生達の始業式である。






雪の街の愉快な奴ら
〜第五話 とりあえずの始まり〜









「そして我々はこうして走ることも無く予鈴にせかされることもなく校門を潜り抜けたっ!!」
「祐一が変だよ」
「名雪、近づくとバカが感染するわよ」
「むぅ、バカに感染すると俺のビューティフルな美男子が失われてしまう。
そういうわけで俺も離れる。うらむなよ祐一。すべては俺の美しき姿のため」
「もちろん折原君にも近づかないように」

 校門を抜けたところで両手を上に掲げ歓喜する祐一、そしてそこから遠ざかるように
離れる、香里、名雪、浩平。


 これが始業式での彼らの朝だった。






「さてクラス分けを見に行きましょうか」
「じゃあ俺は職員室に行ってくるわ」

 また後でな、と言って校舎の方へと歩き出す浩平に名雪が思い出したように声をかける。

「あ、浩平、職員室の場所わかる?」
「ああ、知ってるぞ」

 それだけ言うと浩平はさっさと校舎へと入っていった。

 そして自分達もクラス分けを見に行こうとしたとき香里ふと気付いたように声をあげた。

「ねえ名雪、折原君どうしてここの職員室の場所知ってるの?」
「え?」

 そこで名雪も気付く。
 浩平は確かに「知ってる」と言ったのだ。「わかる」ではなく……

「そういえばそうだね、なんでだろ?」
「いや、そんなに気にしなくても良いだろ」

 祐一がそう言うと名雪も「そうだね」と悩んだ顔をあっさりと一変させて再び歩き出す。



「よお、お前ら久しぶりだな」

 掲示板の近くまで来たところで終業式以来会ってなかった北川がいつもと変わらぬ様子で
近寄ってきた。

「両手に花か、いや羨ましいことだな」

 北川はいつも通りにやにや笑いながら祐一の肩を叩く。

「そらどーも。でもお前が来たから片手に花になったな」

 祐一もいつもの如く軽く流す。

「そういえば北川、クラス分けはもう見てきたのか?」
「おう、ばっちりと見てきたぞ。聞いて驚け、なんと俺達四人みな同じクラスだ」
「ほんと!? よかったね祐一」

 名雪が祐一の方を見ながらそれはもうとても嬉しそうに笑う。

「あら名雪、私が一緒なのは良くなかったのかしら?」
「わっわっ、そんなことないよ。香里も一緒で嬉しいよ」

 ちょっぴり冷ややかな眼差しを向けてくる香里に名雪は慌てながら否定した。











 始業式を終えて祐一達は自分達の教室へと戻って来る。
 教室には何人かがすでに戻っておりそれぞれ自分の出席番号に応じた席に座っている。
 そして祐一は慣れない教室にも関わらず迷わず自分の席につく。
 探すまでもない、出席番号一番なので非常に楽なのだ。

「お、相沢、近くだな」

 すぐ後ろから北川が声をかけてきた。
 席は祐一の隣の列の前から二番目、要するに祐一の右斜め後ろである。
 ちなみに祐一の隣の席には男子が一人いるのだが机に突っ伏しているため顔は見えない。
 まあ見えても覚えないだろうが。


「祐一、また同じクラスだね♪」

 早速名雪と香里がいつもの如く集まってきた。

「学校についたときにも聞いたぞ、それは」
「あ、そうだったね」

 名雪が軽く舌を出しながら答えると北川が楽しそうな声を出す。

「お前ら冬休みがすぎても変わらんな」

 それに香里も同調する。

「ほんと、そうね……と、そういえば折原君はどこのクラスになったのかしらね?」
「そういえばどこなんだろうね。一緒のクラスだったら良いね」
「名雪、あなた相沢君の時も同じこと言ってたわよね」
「だってそう思ってるんだもん」
「はあ」

 名雪のあまりに能天気な思わずため息が出る。
 と、そこに一人会話を理解できていない人間が居た。

「なあ、その折原って誰だ?」

 北川である。
 だが答えを返したのは三人の誰でもなかった。


「俺だ」
「どおぉぉっ!」
「わわっ」
「えっ!?」
「誰だ!?」

 突然間近から上がった声に四者四様の反応が巻き起こった。

 声の方向を向くとそこは祐一の席の隣、先程机に突っ伏していた生徒がいた席だ。
 そこに浩平が座っていた。(正確には先程そこで突っ伏していたのが浩平だったのだ)
 ちなみになんだか元気がなさそうな顔だ。



「あれ、浩平、ここにいるってことはここのクラス?」

 浩平がああ、とだけ頷くと名雪はびっくり顔から一転、にこにこ顔になった。

「そうなんだ〜、よかったね〜」

 一方、北川と祐一は

「誰だ?」
「名雪の従兄だ。水瀬家居候パート3と覚えとけ」

 かなりいいかげんな紹介をしていた。


「で、一体何を落ちこんでたのかしら?」
「お、香里心配してくれるのか?」

 浩平が先程の落ちこみモードから少し元気を取り戻した。

「実はな……」

 神妙な顔をして語り始める。

「転校時のお約束、自己紹介がないんだ」

 しょうもない理由だった。
 学年が変わるとともにクラスも変わったからそういうことも有る。
 なんでそんな理由でこんなに落ちこめるのかふしぎなものである。

「ううぅ、俺の人生はいったい何のために……」

 えらい落ちこみだ。

「せっかく色々持ってきたのに……」

 …………

 祐一がなんとなく気になって浩平のかばんを見てみると膨らんでいた。
 さらに気になって取り合えず開けてみる。

「わ、ちょっと祐一」

 名雪がとがめるような声を出すが浩平本人は何も言ってこないので中の物を引っ張り出す。


一つ目  フック付きロープ


 何の変哲も無い、普通の金属製フックがついたロープである。

「「「……」」」

 なんとなく何がしたかったのか想像できてしまう。

「まだ何かあるな」

 再びあさってみる。


二つ目  『阪神最強』と書かれたトラ柄のマント


 これもまんまである。あえて特徴を述べるなら『阪神最強』の文字が達筆であったことくらいだ。

「阪神ファン?」

 香里がそれを見て深刻な顔で呟く。

 これ以上漁るともっと怖いものが出てきそうな気がしたが止めずに再びかばんの中に手を突っ込む
とまだ何かある。だがどうやらこれで最後のようだ。


 三つ目  タイガーマスク

 ゴム製の後頭部まで覆う(覆面レスラーがつけてるような)タイプである。

「うあ」

 これを見て名雪もなんとも言えない声を出す。
 これらを全部使って何やるのか、ある程度までは想像できるがそれ以上は無理だ。

「凄いな、流石相沢の周りのやつは普通じゃない」

 北川が褒め称えるが当然んなもん嬉しいはずが無い。


「おーい、お前ら席につけよ」

 がらりと教室の扉を開けて石橋が入ってくる。
 どうやら担任はまた同じになったようだ。










 教科書配りなどの学年最初イベントのすべてが終わり放課後となる。
 割と時間がかかりもうすぐ昼だ。

 祐一は来る時よりも随分と重くなったかばんを持って立ち上がる。

「名雪、浩平、帰るぞ」
「あ、私部活あるから」
「そういえば昨日結構熱心に勧誘してたけどどうだった?」

 名雪は次期部長と言うことで新入生の勧誘も人一倍熱心だったのだ。

「うん、上々だよ。真琴とあゆちゃんも入ってくれたし」

 名雪は嬉しそうに結果報告をする。

「というわけで浩平も入らない? 陸上部」
「やだ、めんどい」

 とりあえず自己紹介が出来なかったことのショックから立ち直った浩平にも訊いたが
返事はそっけないものだった。

「うーん、そう。残念」

 名雪も一応答えは予想していたのか多少残念そうにしながらもおとなしく引き下がる。

「浩平なら次期副部長も狙えると思うんだけど」
「名雪、いくら部員が欲しいからってそういうおだてて誘うのは良くないと思うぞ」
「そんなことないよ、浩平結構速いんだよ」

 そうなのか? と浩平の方を見ると

「小学校の頃、鬼ごっこではスピードならほぼ互角だったぞ」

 と答えてくれた。

「でもいつもどうやってか浩平には逃げられたんだよね」

 昔を思い出したのか名雪が楽しそうに話してくれる。
 割と苦い思い出だろうに。

「そういやみさおはどうした? あいつなら入ってくれそうだろ」
「それ駄目だよ。みさおはチアリーディング部に入っちゃってるから」
「動いて叫べる。騒がしいのが好きなあいつには天職みたいなもんだ」

 そう言うと浩平はさっさと教室から出ていってしまい、名雪も去り際に「じゃあね」と
だけ言い残してそれに続く。

 そして祐一も教室から出ようとしたとき後ろから声がかかった。

「相沢君」

 その声には聞き覚えがあった。しかしそれはろくでも無い覚えで二度と聞きたくない、
そう思っていた声だ。

「よう、久瀬。久しぶりだな」

 振り返った先に居たのは以前、舞のことでもめた生徒会役員の久瀬だった。

「そうだね、およそ二ヶ月ぶりと言ったところか」

 久瀬は最初にあったときと全く変わらぬ漢字で言葉を返す。
 何の用かは知らないが祐一はあまり相手をしようという気は起きなかった。適当にあしらって
返ろう、そのつもりで久瀬に向き直るとそこで気づいた。

 久瀬が後ろから声を書けてきた、つまり久瀬は教室に居た、それはつまり……


「お前、同じクラスだったんだな」
「北川君の後ろの席にいたよ」

   ぜんぜん気付かなかったよ

 祐一は一瞬敵意を忘れてそんなことを考えながら久瀬を見る。

「で、何のようだ? 俺はお前と話す事は無いぞ」

 二人の周りに険悪な雰囲気が漂う。
 すでに他の生徒はすべて教室から出てしまっているので遠慮など何も無い。

 だがそんな状況下で久瀬の発した言葉は非常に意外なものだった。

「とりあえず川澄さんのことで一応謝っておこうと思ってね。
申し訳無かった」

 そう言って久瀬が頭を下げたとき、さすがにびっくりした。

「春休み中に調べものがあってね、その時に昔のことを調べてたら偶然見つけたんだよ。
川澄舞と言う少女が不思議な力をもっている、というものだったよ」

 そのことに祐一は絶句した。舞の力を知られることは避けるべきことなのだ。
 だが久瀬は祐一のそんな様子を気にせず続ける。

「それを考えるとこの学校に居る川澄さんの行動などにもある程度の説明はつけられる。
流石に彼女のそんな事情を考えるとやり方が悪すぎた、そう思った。だから謝るんだよ」

 とりあえずそこまで訊いて久瀬が舞に危害を加えるつもりなどは無いと判断する。

 そして

「俺よりも先に謝っとく人達が居るだろう」

 祐一はそう言って久瀬を睨みつける。

「大丈夫だ。倉田さんと川澄さんには随分前に謝っている」
「はぁ?」

 久瀬のあまりにも余裕な答えに対して思わず間抜けな声を出す。

「……確かあれは春休みが始まって一週間したくらいに彼女の事情を知ってね、一応本人に
確かめた後謝ったよ。『やりすぎなところがあった、申し訳無い』と」
「お前、超常現象をえらいあっさり受け入れるんだな」

 普通の人ならば現実的にトリックだと思い相手にしないだろう。

「流石にあの時の川澄さんから感じたプレッシャー、アレだけでそういった類を信じるには
十分だと思うが」

 あの時、というのは久瀬が佐祐理の生徒会入りを発表している時、舞がそこに割って入った時
のことだろう。確かにあの時、久瀬だけでなくその場にいた全員が何らかの気配みたいなものを
感じていたはずだ。
 そしてそこから久瀬はそんな超常現象を信じる気になったということだろう。
 実際祐一も夜の校舎で魔物と相対したからこそあんな不思議なことを受け入れたのだ。
 人間、自分の体で感じたことはそうそう否定しないものなのかもしれない。


「だが特殊な事情があったとはいえやはり悪かったのは彼女で僕は悪いことをしたとは思って
ない。謝ったのは……彼女のそれなりの事情に対して申し訳なかった、そう思ったからだ」

 祐一はその言葉を聞いて敵意を解く。

「そうか、ならそれはいい。それでもう一つ訊いときたいことがある」

 祐一はとりあえずそれに納得して頷いた後、目を細めて久瀬を軽く睨む。

「何で俺だけが今なんだ?」
「……」

 久瀬は少し目を泳がした後こう答えた。

「まあ君なら別に春休み終わって学校が始まってからでもいいか、と思って」
「こらマテヤ生徒会役員」

 久瀬の答えはかなり軽かった。









「とまあ、こんなことがあったわけなんですよ」
「あははー、そうなんですか」

 祐一が先程の久瀬とのやり取りを説明すると佐祐理が笑顔で返事をする。
 祐一は今、屋上前の階段で舞、佐祐理と共に昼食をとっていた。
 久瀬との会話の後、なんとなく舞達のことが気になってここに来たのだ。

「俺だけ後回しかよ。男女差別だな、これは訴えないといけない。佐祐理さんもそう思うだろ?」

 祐一は左手に持ったクリームパンを齧りながら右手に持った箸で舞が取ろうとしていたタコさん
ウィンナーを掠め取る。

「でも久瀬さんもお忙しい方でしょうからそんなに怒らなくても」
「まあ別にそんなに怒ってるわけじゃないんですけどね」

 と、今度は祐一が取ろうとした卵焼きが全て一瞬にして掻き消える。横を見るとそこには
バーベキューの串のようにいくつもの卵焼きを刺した箸を持つ舞がいた。

「だぁぁっ、舞っ!! 行儀悪いぞ」

 だが舞は無視して箸に刺さった卵焼きを一気に食べ、その顔が幸せそうに緩む。

 そんなこんなで昼食は進んで行く。





「それにしてもここは良い場所だよな。人もいないし雨でも問題無いし」

 弁当も食べ終わった後、佐祐理の淹れた紅茶を飲みながらふと祐一は思ったことを口に出した。
 冬はちょっと寒いが天候に左右されないことを考えると弁当を広げる場所としては最適だろう。


「はい、ここは佐祐理の小さい頃の友達と見つけた場所ですから」
「小さい頃の友達?」

 祐一が聞き返すと佐祐理はとても大切なものを包むようにして胸に手をあてる。

「はい、とても大切な友達です」

 にっこりと微笑みながら祐一の問いに答える。

「へえ、それってどんなヤツだったんだ? 聞いてみたいな」
「私も聞きたい」

 祐一に便乗するように舞も佐祐理に詰め寄る。

「もう、舞には前に話したでしょ」

 そう言うと舞はこくりと頷く。

「でもまた聞きたい」

 舞は表情を変えぬまま続ける。

「この話はぜんぜん嫌いじゃない。だから何度でも聞きたい」
「あははー、なんだか照れますねー」

 そう言いながら佐祐理は頬を少し朱に染める。

「じゃあ話しますよー」

 そう言うと佐祐理は思いでの宝箱を開けるように話し始めた。









 初めて会ったのは十歳の時のある夏の日、弟の一弥と水鉄砲で遊ぼうとやってきた川辺だった。
 そこに居たのは佐祐理より少し下くらいの兄妹と思われる男の子と女の子だった。
 彼らも佐祐理達と同じように水鉄砲で遊んでいた。

「ねえ、君達も遊んでいるんですか?」

 見れば分かることなのに何故そんなことを尋ねたのは今でも良く分からない。もしかしたら彼らが
余りにも楽しそうに見えて一緒になりたいと思ってただ話し掛けたかっただけからかもしれない。

「そうだ。お前達も一緒にやるか? こいつ弱すぎて面白くないんだ」

 男の子の言う通り女の子の方は水浸しなのに対して男の子のほうは余り濡れていない。
 でも佐祐理は面白くないと言うのは嘘だと思った。だって二人ともあんなに楽しそうな顔をしていた
のだから

 だから佐祐理は迷わず答えた。

「はいっ!! ご一緒させてもらいます」



 そして夕暮れまで四人は遊んだ。

「わーい、勝った勝ったー♪ お兄ちゃんに勝ったー♪」

 女の子がぴょんぴょんと飛び跳ねながら喜びを表す。それに対してびしょ濡れの男の子はむすっと
した顔でそれを見ている。

「三対一はずるいだろう」

 そう、あの後佐祐理と一弥が少女側に加わって少年を追いまわしたのだ。
 結果は言うまで無い。

「楽しかったですね〜」

 佐祐理が男の子にそう言うと彼はむすっとした顔で別のほうに顔を向ける。

「また明日な」
「え?」

 佐祐理は男の子の言葉が良く聞こえずに聞き返す。

「また明日、この場所で待ってろよ。今度は絶対勝つからな、逃げるなよ!!」

 男の子はそうまくし立てると返事も聞かずにそのまま立ち上がって歩き出してしまった。

「じゃあまた明日ねー」

 女の子もそう言うと男の子の跡を追いかける。

「へっへっへー、勝〜った勝った♪ お兄ちゃんに勝ったんふにゅろ」

 ご機嫌に歌っていた女の子に男の子はゲンコツを落とす。それで女の子は静かになる。
 そんな二人を見ながら佐祐理は一弥に話し掛ける。

「また明日も来ようね」
「うんっ!」

 返事を返した一弥の顔はとても嬉しそうだった。




 それから四人で毎日一緒に遊んだ。
 かくれんぼもしたし鬼ごっこもした。夏の定番の虫取りもした。たくさん遊んだ。
 出来たばかりでまだ誰も使ってない頃の校舎に忍び込んで探検もした。そのときに屋上前の
階段で佐祐理が持ってきたお弁当を四人で食べた。

 とても楽しい日々、しかしそれでもやはり終わりは来る。
 出会ってから十日目、彼らは家に帰る事になった。もともと彼らは夏休みに親戚の家に遊びに
来ただけだったそうだ。
 寂しかったけどどうしようもないから、ただ最後の日だから思いっきり遊んだ。次の日は佐祐理
達は家の用事で見送りには行けない。だから日が暮れても明るいうちは大丈夫、と言って怒られる
のは分かっていたけどまだ遊んだ。

 そしてその時まだ子供だった彼らはお互いの連絡先を聞くなどということも思いつかず、完全に
暗くなってしまってからさよならを言って別れた。

 しばらく後、その川も補修工事で遊べる場所ではなくなった。
 それからもまた会えるのを期待して遊んだ場所に行ったが行ったがその子達とはもう会うことは
無かった。













「と、まあこんなところです」

 話し終えたところで二人の様子を見る。
 すると祐一が感心したように口を開いた。

「それにしても佐祐理さん、校舎に侵入って結構お転婆だったんですね」
「あははー、そうですね。今思えばちょっとむちゃなことしたかなー、とか思います。
でもそのおかげで舞や祐一さんとお弁当を食べるこの場所を見つけれたんですよ」

 佐祐理はそう言いながら空になった弁当箱を片付け始める。
 祐一がそんな佐祐理をみてるとちょいちょいと服の裾が引っ張られるのを感じた。

「……?」

 振りかえって見ると裾を握っている舞が居た。そしてその目は祐一に何か期待している
ように見える。
 何を期待しているのかは分かる。確かに昔の話をしている時、そしてその後の佐祐理は
とても楽しそうだ。しかし同時にかすかな寂しさも見える。その理由も大体想像がつく。

 舞が佐祐理に昔話をするのに賛成したのは佐祐理が楽しそうにする、というだけではなくて
この寂しさを祐一と一緒に何とかしたい、と言う気持ちもあったのだろう。それは舞の目を見
れば分かる。だが

(どーすればいいかな)

 多分舞はこう言うことに関してはまるで知識が無いので祐一を頼ったのだろう。だが祐一も
こういう場合にどうすればいいかわかるはずも無い。
 そうやって悩んでいるうちに佐祐理はてきぱきと片づけを終えていく。


(ええい、ここまで頼られて引き下がっては男が廃るっ!!)

 祐一はとりあえずそう覚悟を決めると口を開いた。

「佐祐理さん」
「はい?」

 ちょうど片付けが終わると同時に佐祐理が返事をする。

「折角だからさ、このまま三人で遊びませんか?」
「はい、このままですか?」
「そうそう、家まで帰らずに寄り道気分で」

 佐祐理は少し迷ったように首を傾げて舞を見るとこちらもこくこくと頷き賛成の意を
示している。それで彼女も決心がついたらしく。

「はいそれでは佐祐理もお供させていただきます」

 そう笑顔で答えてくれた。







 ただとりあえず今ここにいる三人で遊ぶ。
 それが祐一の思いついた考えだった。







続くんだよ




後書き

…………何も言えることがありません。むちゃくちゃ間が空きまくりました

テストや自動車学校やらでひまが全然でした

この作品を見ている方、少ない(どころか皆無かも知れないけど)今後は間が空き過ぎ
ぬそう注意しますので見捨てないで下さい。

後この作品を載せてくださったユウさんにも感謝とお詫びを申し上げます
ありがとうございます、すいませんでした。



感想などなど

久瀬が…久瀬がっ(ノД`)シクシク(ぇ

感想その他はときなさんへメール、もしくはBBSなどにどうぞ。










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