「イングラム少佐がエアロゲイター、異星人だったとはな」

由紀子へ先ほどの戦闘について報告した後、浩平はソファーにもたれ
かかりながらそう言った。
ちなみにこの場にいるのは浩平の他には瑞佳、七瀬、広瀬にみさきだけだ。
皆も知った人間が実は敵のスパイだったという事実に気持ちが沈んで
いるらしい。

「リュウセイ君達、どうしてるかなぁ……」

瑞佳が心配そうな声をあげる。それもまた当然だった。
それほど親しいわけではなかった浩平達ですらこうなのだからより
身近にいた彼らの方がショックは大きいだろう。
そしてその本人たちはこの場にいないためその心境は想像するしかない。

「あー、でもイングラム少佐がエアロゲイターならロンド・ベルの帰還
がもうすぐっていうのは信用できそうだね」

そんな暗い雰囲気をかき消すようにみさきが明るい声音で話題を変える。

「まあな。だけど報告した後で言うのもなんだが本当か? あれ」
「まあ敵の言ったことを鵜呑みにするっていうのも問題あると思うけど
大丈夫と思うわよ。そんなうそ言ってもメリットなんかなさそうだし…。
むしろ私はなんのために来たのか、というほうが気になるわね」

広瀬の新たな疑問にみな頭を捻る。

「私達を倒すにしては戦力はともかく気迫みたいなのは感じられなかったわね」
「むしろヘルディンに合体したのを見届けたらすぐに帰ったっていう感じがしたよ」

みさきの言葉にふとイングラムの去り際の言葉の一部を思い出す。


『このアンティノラをここまで追い詰めるとは…予定以上の出力を
出しているようだな』

この言葉、まるでニーベルングヘルディンの合体を促すこと、その性能を
見届けることが目的のようにも思える。

(まさか…な)

さすがにそれはないだろうと頭からその考えを振り払う。

「まあ異星人の考えなんて考えてわかるもんじゃないかも知れないけど」

広瀬はそれだけを最後に投げやりに付け加えた。

「ふむ、ならばだよもん星人としてはやつらの動きをどうみる?」

そこで浩平は隣にいる瑞佳に内容の伴わない真剣さで声をかけるが彼女は
それに頬を膨らませながら抗議する。

「もうっ!! だからわたしはそんなにだよもん使ってないよ。
私はれっきとした地球人だもん」
「なっ!?」

そんないつもの会話、だがいつもと違い浩平は驚いたように一歩後ずさった。

「瑞佳が地球人、ということは地球とはだよもん星だったのかー!!」

それはまさに人の持つ常識を根底から覆す事実、それを聞いた者が発する
魂の底からの驚愕の叫び………


っぽいような叫びを浩平は発した。

「とゆーことはこの場合俺が異星人・・・・・・」

だが始まり方がいつもと違ってもそこから先は同じだった。

「そうだよね、浩平はばかばか星人だもんね」
「なんだと」
「だってそうだもん」
「ぬー」
「うー」
「くー」
「ふー」

互いににらみ合いながら声で牽制を繰り返す。

「平和ね」
「そうだねぇ」

そんな争いを見守りながらシャイン・シーズンは帰路へとついていた。

     

カノン大戦α外伝
〜巡るエターナル・ナイツ〜He watches true〜


第十五話 漆黒に浮かぶ大いなる槍

〜ラビアンローズ内ブリーフィングルーム〜

「はぇ〜…大型の建造物、ですか?」
「…しかもこの集合規模…一体なんなんでしょうか」

久瀬から教えられた場所を調べた結果、先ほど佐祐理が口に出した
巨大な建造物、そしてかなり大規模な戦力が動いていることが判明した。
今はそのことについてシャイン・シーズン、プロミス・リレーションが
集まりその対策を練っているところだ。

「ここからはすでに散布されたミノフスキー粒子によって詳しいデータが回収できないわ。
浩平、そっちの消耗状況は? ざっとでいいから報告お願い」

佐祐理と茜の言葉を受けて由起子さんが浩平のほうを向く。

「イングラム少佐との予期せぬ戦闘のため、ニーベルングヘルディンへと合体を実行。
戦闘による損傷そのものは軽微ですが他は時間をください、としか言えない消耗です」

浩平は必要最低限のことだけを述べ、他の報告については書類を渡して終える。

「…なるほど。美坂軍曹?」
『あ、はい。スタッフの協力のおかげで補給作業や消耗したカノン以下機動兵器の
調整は順調です。数時間もしないうちにほぼ終了すると思います。
ただ…ニーベルングヘルディンへの合体への影響は未知数としか…』

デッキからの通信が即座に帰ってくる。

「ありがとう。聞いたわね。出撃可能になるまで可能な限りの調査は行うわ。
パイロットは各自確実な休養を取って出撃に備えること、以上」

一時解散の合図を伴い、祐一達は自由行動とるが特にすることもなく浩平は
とりあえず近くにいる茜に話し掛ける。

「さて、茜はどうする?」
「私は艦の最終点検を。今回は今までで最も激しい戦いになりそうですから」
「そういえば新しい艦にはもう慣れた?」

茜の言葉に由紀子がふと思い出したように訊いて来る。

「はい、今までジオンの物を流用していたので最初はブリッジの皆さんも
戸惑っていましたがすぐに慣れたようです。
わたしの方も」
「流石ね。そうしてくれればこちとしても新型艦を回したかいがあったってもんね」
「んー、さっすが茜だねー♪」
『なのっ』

その時どこから現れたのか詩子が茜の後ろから抱きつき澪がスケッチブックを
抱えながらぴょんぴょんと飛び跳ねる。

「おまえら、どっから出てきた」
「んー気にしない気にしない。ね、澪ちゃん」
『そのとーりなの』

最近詩子に感化されたのか澪もずいぶん図太くなってきたらしくあっさりと浩平
のツッコミは流される。。

「詩子、苦しいです」
「照れない照れない」

そんな彼女達の様子に穏やかな表情をする由紀子。

「女三人集まれば、ね」
「オレは慣れましたよ、さすがに」

三人というが実際には詩子一人でも十分騒がしい。他の二人は騒がしさに
関して言えばオプションにもなっていない。
そんな談笑するメンバーを横目に真剣なまなざしにもどる浩平と由紀子。

「で、浩平はどう見る?」
「…まず、形勢がひっくり返りかねない何かをジュピトリアンは持っている。
これは間違い無いだろうと思う。そうでなければわざわざ見つかるのを覚悟で陣を
展開したりしない」

プリントアウトされた対象の宙域を指差す浩平

「そうね…。となると…何かの兵器的な建造物…、かしらね」

その後もいくらかの会話を交わし、二人は議論を続けた

そして全員を集めて最後のミーティングが行われた。

「もう一度説明するわね。現時刻を持ってプロミスリレーションおよび
シャイン・シーズンは共同でジュピトリアンの集合宙域へと調査ならびに
戦闘行動を前提とした進軍を行うことを決定したわ。
集合の理由が判明次第、それの目的を妨害、ただちに離脱を行うのよ。
その作戦目標は集合目的と敵陣営の混乱、以上。敵の全滅はこちらの戦力的に
不可能でしょうから、目的を達成、もしくは撤退すべきとなればすぐさま撤退よ」
「隊長、目標がなんらかの兵器的な建造物だった場合も含め、まとめて
Gイレイスキャノンを撃つのは不可能でしょうか。敵の反撃を考えるとベストに思えますが」

祐一が成功したならばこの上なく楽であろう手段を述べる。
しかし現実は甘くなかった。

「そうね。普通の建造物だったらそれも可能でしょうけど、
なんらかのエネルギーを保持していた場合爆発やその衝撃は
撤退が間に合わない規模で訪れる場合が考えられるわ」

確かに目標が兵器的なものであればあの巨大さを考えるとエネルギーの暴走だけでも
想像したくもないような被害が伺える。

「こちら側は少数による切込みを中心に一気に陣営をかき乱し、
その隙に本隊が周囲の敵を掃討しながら敵建造物の詳細を把握、
切り込み部隊により突破口を開き、双方を持って妨害に移るわ」

「こちらは…俺と…舞は確定か。真琴、行くか?」

祐一がそう言ったのを聞くと浩平もすぐに人選を決めた。

「カノン、サーバインが行くならこの二機で破壊に関しては十分だな。
みさきと澪、繭それに俺であいつらの援護をするぞ」

人選も決まり出撃となった。

 


〜ホーン・クラウド格納庫内〜

「広瀬、ニーベルンの方はどうだ?」

ウェルスのコクピットで調整を行っていた広瀬に浩平は声をかけた。

「…合体のことね」

広瀬はしばし沈黙して浩平の意図を正確に読んで返事を返す。

「ちょっとわかんないわね。本来なら合体のための補助パーツがつくのよ。
そもそもヘルディンに合体すると二基の素粒子結合炉を制御することになるん
だけどその結合炉は私達の脳波によって制御してることは知ってるわよね」
「ああ、そのあたりのことは南アタリア島でロフから聞いたよ」

浩平は頷きさらに先を促す。

「そして合体の際、私達はそれぞれのエネルギーの波長を同じにしなければなら
ないの。
そうじゃないと一つの機体に二つの波長のエネルギーが駆け巡ることになるから。
といっても人の脳波による制御だから完全には無理よ。
……てわかる?」
「一応……そしてにその誤差を修正するためにならさっき言ったパーツが必要、
だけどまだ出来てなくてそれなのに無理してしまった、てことか」

ちなみに浩平達は知らないがその補助パーツの技術は第二新東京市での使徒殲滅
の作戦時に光子力エネルギーとゲッター線という二つのエネルギーを融合する
ための装置にも使われた。
もっともその仲立ちにトロニウムを使ってはいたが。

「ま、そゆこと。それでも短時間なら無理もきくんだけどそれでもそこそこ負担
はかかるのよ。だから合体の後はちゃんとと整備しときたかったんだけど…」
「そんなひまはねえよなぁ」
「ええ、だからまた合体しても今度は三分持たないかもしれないわね」
「そうか……それは苦しいな」

今回のように戦力差が大きいとき、ヘルディンならば戦況もずいぶん
変えられたかもしれないのだが。

「ねえ」

だがそんな会話に隣の機体からあがった不満の声に二人は同時にそちらを向く。

「どーして私にはきかないのよ」

そのコクピットから顔を覗かせている七瀬の顔は不機嫌そうだ。
自分にも関係があることなのにそっちのけにされたことが気に
食わなかったのだろう。

「いやだって七瀬は突撃戦闘専門だろ。でっかい剣振り回して
『七瀬さまのお通りじゃー!!』とかいうのが………」
「やるかっ、そんなことっ!!」

七瀬にぶん投げられたヘルメットは浩平の顔面の中心へ見事に
ヒットし見事に倒す。

「うう、見事だ……」
「じゃあ、向かってくる敵を素手でばったばったと……」
「真希、あんた最近折原に似てきたわね」
「それはすさまじくイヤね」

セリフも途中に半眼でそう告げる七瀬に彼女はそう答えながら再びコクピット
へと戻っていった。

「いつつ、七瀬のやつ思いっきり投げやがって…」
『自業自得だと思うけどな〜』
『まったくなの』

浩平の独り言にみさき澪から通信がはいる。

「いやー、でも面白いぞ」
『そんなこと言うからだよー。それにもうすぐ作戦開始だよ』

みさきのその言葉が合図だったかのように全員に由紀子からの通信が入る。

『全員聞いてるわね。グレイファントムおよびホーン・クラウド両主砲で
戦闘の口火とするわ。切り込み人員はそれと同時に進軍開始、いいわね!』

「折原機、準備完了。みんな、準備はいいな」
『こちらみさき、澪、準備いいよ』
『まゆもOKだよ』

ちなみに繭は今回は敵のかく乱が目的のためアサルトタイプでの出陣だ。

緊張の空気に包まれた中グレイファントム、ホーン・クラウドで皆が作戦開始
の合図を待つ。

『作戦開始!』

その言葉に続きホーン・クラウドとグレイファントムから主砲が放たれ、
それと同時に皆機体を加速させる。


「おーおー来る来る。なんか蜂を思い出すな…」

こちらにむかってわらわらとやって来るMSの群れ、それはさながら
蜂の大群を連想させた。

「さしずめさっきの主砲は巣をつついた棒ってとこか。
生身なら迷わず逃げてるが……一気に突っ切らしてもらうぜ」

浩平はMS形態で猛スピードですれちがいざまに赤い機体を両断し、そのまま
速度をほとんど殺さずに僅かに方向を修正して放たれるビームを避け
さらに二機葬る。

「まだまだいくぞっ!!」

グレネード、アサルトライフルそれぞれ放ち、その一撃一撃が違えること
なくMSを残骸へと変えていく。

「うし、周りはかたづいたな」

そう言うと浩平は機体をさらに加速させ敵陣を切り裂くように疾走する。
その途中、浩平の目に捉えられた機体は即座にその存在を鉄の塊へと
変えられていった。

「どけどけぇっ、今日のおれはいつもとちがうぜ、邪魔すんなっ!!」

浩平の快進撃は敵陣の只中にあっても止まらなかった。
全方位から襲ってくる攻撃をすべて無理なく流し、彼の背後にはまさに
鉄の残骸の河とも言えるものが残されていた。
それはまさに燃え上がる炎の如く途切れることなく破砕という名の燃え跡を
広げてゆく。

一方、浩平とは別の軌跡を描きながら二つの白いガンダムが漆黒の宇宙を
走り抜けていた。

「くらわないっ」

前方一面から迫ってくるビームの雨を繭はF90を縦横無尽に駆け巡らせ
ながら攻撃の合間を縫ってビームライフルで敵機を沈黙させガトリングガン
で別の機体を蜂の巣にする。

「みゅー、そんな一直線でむかってきちゃだめだよ」

さらに正面からこちらへと突っ込んでくるタイヤのようなもの中に入った
MS達を繭のビームバズーカは次々とロックしていく
体当たりをかますために勢いをつけていた彼らは当然回避行動もとれず
正面から貫かれた。
だが敵はまだ大勢いる、当然その攻撃後の隙につけ入り何機もの機体が攻撃
を仕掛けようとする。

「一応こっちにもいるんだよ」

だが攻撃を仕掛ける前に半数は繭からとは違うビームにより落とされ、残った
者達の攻撃も繭の前に展開されたビームシールドの前に遮断された。

「残りもいくよっ!!」

敵が次の攻撃を仕掛けるヒマもあらばこそみさきと澪がサーベルを幾度も
振るいその一動作ごとに敵は一機ずつその動きを止められていく。
敵パイロットたちはその急激な動きについていけず反撃にする前に、
あるいは機体を動かす間もなくその身を焼き切られる。

「繭ちゃん、浩平君に続くよっ!」
「りょーかい」

正面の敵のみを排除し、前進のための道を作った後、みさきは通信からの
通信に即座に返事をすると繭はVガンダムとともに浩平の後を
追い再び漆黒の闇を走り抜ける。


「祐一はどうだ」
『真琴達より先に行ってるわよ。とはいえ数が多すぎて取り付けてないみたい』

一通り敵陣を乱した浩平は祐一達と連携を取るため再び後退し、真琴達のもと
にきていた。

『ホーン・クラウドより各機へ。敵建造物は巨大エネルギー砲です!!』

そこにホーン・クラウドからの通信が入り、緊張が走る。
そして真琴達にも同様の通信が入る。

「聞いたな? この中であの規模をどうにかできるのは相沢機と川澄機しかいない。
オレたちは二人の突破口を開く!!」
「二人はちゃんとまもる」
「オッケー、やるよ澪ちゃん」
「(こくこく)」
『了解。栞、一気に行くわよ』
『ええ、行きましょう…』

浩平の言葉に彼女達は力強く答えた。


「いったいなんて物を造ってくれたのですか」

珍しく語気を上げながら茜はジュピトリアンに対する恨み言を述べる。
地球上、いや射程に入れば宇宙でも逃れる術は無い巨大エネルギー砲、
それが、建造物「カイラスギリー」の正体だった。

「ここで退くわけにはいきません。戦線を維持しなんとしても相沢機、
川澄機のを辿りつかせるのです」

力強く言うものの内心茜は焦りを生んでいた。
敵は倒しても倒しても次々と出てきている。
以前祐一達に言ったように自分たちは人海戦術が弱点だということは
わかっていた。
この絶対的な数の差はどうしようもない、それはわかっている。
だが

「それでも諦めるわけにはいかないのです。
各砲座発射を続けてください。一機でも敵を減らすのです」
「小坂隊長機より伝達。『両母艦を持って敵本陣へ突入。
先鋒のカイラスギリー取り付きを確実なものにすることを提案。
護衛はこちらに任せて欲しい』以上です!」
「了解しました…。これより本艦はカイラスギリーに突撃をかけます。
総員対ショック防御! 突入開始!!」

「まったく数だけで来るんだから。こういうときにヘルディンは有効
なんだけど…」
『七瀬さん、広瀬さん、ヘルディンでなんとか突破口は開けませんか?』
「いや、だから無理だって」

広瀬はうんざりしたような口調で返事を返す。
数えるのが嫌になるような数の敵が休むまもなく攻撃を仕掛けてきてるのだ。
合体のひまをひねり出せる状況ではなかった。
ゲッターのように一瞬で合体できるのならともかく彼女達の機体は
そういう設計ではない。

「でもへこたれないもん。浩平達の方がもっと大変なんだから」
「そーだよ。諦めることなんてしない。そんなの基本でしょ」

詩子はビームキャノンで手近なMSを破壊しながら明るく答える。
そうして二つの戦艦の道を地道ながらも開けていく。

浩平は祐一達を追いかけ再び敵の中を単独で疾走していた。
その動きは先ほどよりも速く、まさに閃光の如くとどまらず、
奔流の如くすべてを抵抗も許さず呑み込んでいく。
斬り、突き、撃ち、それを繰り返しつつ浩平はカイラスへと迫っていた。

「後ろかっ!」

背後に回りこんだMS三機、それらを沈黙させるため今までと同様ライフル
を向けた。そのときだった。
一筋の白線が生まれ、その線上にあった三機の機体がきれいに斬れる。
その線の先をに入るのはオーラを纏いながら剣を持つサーバインだった。

「ナイスカット」
「ありがとー」
「へ…………?」

その返事に浩平は一瞬言葉を失った。
通信から聞こえてきた声と姿、それはまぎれもなく少女のものだった。
だがそれも一瞬で背後から伸びてきた手に画面の外へと押し出され、
サーバインのパイロットである舞の顔が映る。

「なんだ、今の…」
「気にしない」

浩平の質問に返ってきた言葉は答えになっていなかったが、さらに問う
ことも出来なかった。
新たにMSの一団がやってきたからだ。

「しつこいっての」

浩平はその一団にグレネードを撒き散らし数機を爆砕、他もまたそれなり
の損傷を与える。

『せいっ!』

さらに舞の振るう白刃が動きを止めた者達の、四肢を、バーニアを、動力部を
斬り裂き行動不能にして行く。

さらに次へと向かおうとしたときまったく脈絡のない方向から一筋の光が
カイラスギリーへと突き刺さった。

「なんだ!?」

まったく予期せぬ場所からの攻撃、さほど大きなものでもなかったが
それは敵に十分な混乱を招いた。

『舞、行くぞ!!』

祐一から舞への通信、それは浩平にもまた聞こえていた。
そして不敵な笑みを浮かべながら

「ここは任せとけ、でそっちは任せたぞ」
『任せる、そして任された』

双方ともいつもと変わらぬ口調でそれだけ言うと舞は機体を加速させ祐一
に遅れずにカイラスへと向かっていった。

そのとき、カイラスギリーに光が刺さるのを瑞佳達もまた見た。

「攻撃!? どこから?」
「そんなことよりチャンスっ!」

敵の混乱を見逃さず七瀬達は合体を試みようとする。
そしてそこに割り込む一つの影、ガンダムmk−V。

『七瀬さん、広瀬さん。防御は任してください』

佐祐理はそれだけ言うと装備しているシールド専用のユニットを展開し
無数の攻撃が、一瞬早く形成されたシールドによって全て防がれる。
攻撃が無駄だといち早く悟った者達はシールドを迂回しようとする。
しかし

「七瀬さん達には指一本触らせないよ」

瑞佳の構えたビームガンが

「そのとーりっ!!」

詩子が撃つヴェスパーが

『邪魔するなっ!』

神楽が振るう剣がそのすべてを止めていく。

「今よっ、留美!!」
「わかってる…エクス・ニーベルング!!」

そして淡桃色のカーテンのその先で二機のニーベルンがその姿を変えていく。

「「ニーベルングヘルディン、降臨!!」」

合体が終了するのと同時にミノフスキーシールドが解除される。

『あははー、やっちゃってください』

その声が聞こえるより先に両腕で持った剣にエネルギーを収束させ白い刃が
生み出される。

「全てを聖なる光にて包め…聖翔閃!!」

剣から放たれた光にシールドの先にいた全ての機体が飲み込まれる。

「時間がないからね、一気に行かせてもらうわよ」

ヘルディンの前方に差し出した両腕の装甲が開きそれぞれの腕から蒼と碧の
光が燈る。

「ツインリングマッシャー!」

光は輪となりそこから放たれた二色の奔流は螺旋を描き敵を蹴散らしていく。
そのとき祐一達からカイラスの破壊成功の通信が入った。

『先発隊は急いで戻ってきて。このまま撤退を開始するわよ』

由紀子からの通信にしたがい両母艦は後退をはじめる。
一方浩平達はジオンらしき部隊がジュピトリアンに攻撃を仕掛けているらしく
散発的に襲ってくる敵のみを落とし行きよりも遥かに早く戻ってくる。

「一分三十秒、丁度半分ね」

それと同時にヘルディンの合体が解ける。


「やれやれ、さすがに今回は疲れたな」

遠ざかる戦闘の光を後ろに見ながら呟くその口調と内容は軽いが
その顔は疲労の色を強く浮かばせていた。

『全員に通達』

由紀子が再び通信を開いた。

『先ほど行方不明だったロンド・ベルからの通信を確認。
作戦のため一度全部隊を集合させることが決定したわ』

そしてこの戦いに新たな節目が再びやってきた。

 

 


後書き 

と「さて、今回のゲストは正体不明、目的不明、居場所不明の三拍子揃った
氷上シュンさんです」
シ「なんかけなされてると思うんだけど妙に真実入ってるからうまく
突っ込めないね(笑)」
と「相変わらず笑顔を絶やさんなー。ま、それはいいとしてこの話で
『巡るエターナルナイツ〜He watches true〜 輝く季節の辿った道編』が
おわります」
シ「輝く季節の辿った道編、て何?」
と「いやぁ、とりあえずこの部分の一区切りして何か名前つけたいなぁ、と」
シ「他人の作品なのに何を勝手に……」
と「ううう、それいわれるといたい」
シ「さてこの話にてこの身勝手作者、ときな君による浩平編は終わり、ここから
先の話は次の人へと移ります」
と「ではかなり長いことお世話になりました読者様、このような未熟者に外伝を
任せていただいたユウさん、これにて失礼させていただきます」

〜完〜

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