とある駅前、そこに少年と少女がいた。

「さみぃ」

少年が唐突にそんな言葉を吐き出した。
すでに四月とはいえここは北国でありその上空は曇っている。
そんな状況で一時間もじっとしてればそんな言葉も出てくるだろう。

「そうだね、あんまり厚着もしてこなかったし」

隣に座る少女もその意見には賛成らしく苦笑する。

「てゆーか迎えはどーした、もうこれ以上待たせるなら俺達はここで死ぬしか無くなるぞ」
「お兄ちゃんそれは大げさ。まだ一時間だね」

少女はそう言うが少年の方はそんなこと耳に入っていない。
真剣な表情を持続させたまま言葉を続ける。

「こうなったら…」
「こうなったら?」
「暖め合おう!」

少年は少女に向かって両手を広げそう言った。

「!? そんな、ダメだよ私達兄妹なんだよ!!」

そしてその意味を察した少女は驚いた顔をして少年の言葉に首を振る。

「だがこのままでは俺達はどうなるか…わかるだろう?」
「……」
「それに…俺じゃ嫌か?」
「ううん、そんなことないよ」

そして二人はそのままみつめあい………

やがて少年の方が口を開いた。








「寒いな」

温度のことだけではない。

「そうだね、誰も突っ込んでくれないし」
それに少女も賛同する。
もう四月だと言うのにこの風を寒いと思うのはここが北国だからと言う
だけではないだろう。

「もしかして忘れられてるのかな?」
(あり得るな)

少女の言葉に少年も心の中だけで同意する。
迎えに来るはずの奴は天然っぷりはナマケモノでも真っ青なほどだ。
(なぜナマケモノなのかは謎だ)

(いっそのことほっていくか。場所はわかってるし……)
二年以上訪れていないがそれまではしょっちゅう遊びに来てた街だ。
迷う事はまずない。

「待った?」

そんな考えをさえぎるように、突然後ろから声がかけられた。
ベンチに座っていた二人が振り向くとそこには青い髪の女の子がこちらを
見ていた。
見覚えのある顔だ。だから少年はこう訊いた。

「迎えか?」
「うんそうだよ」

少年が聞くとその少女は嬉しそうに頷いた。
そしてその笑顔を崩さずに訊き返してくる。

「ねえ二人とも、私の名前、ちゃんと覚えてる?」
「もちろんだ」
少年はその問いに間髪いれずに返事をし、自信満々に答えを口にする。

「寝雪」
「一文字違う〜」
「猫アンドイチゴ好き」
「その通りだけどそれ名前じゃないよ」
「だおー星人」
「私そんなんじゃないよー」
「じゃあお前は誰だ」
「わかってて言ってるんでしょ」
「何!? 貴様何を根拠にそんな事を」
「だってそういう人だもん」

当然のようにそう言いきる少女に少年はなんだか悔しくなって更に言い返す。

「だがお前も俺の名前を言ってないな。もし違っていたらお前の推理は全て
崩れる事になるぞ」

少年は無意味に偉そうな態度で少女に指をつきつける。

「じゃあ同時に相手の名前を言おうよ」
「よし、望むところだ」

なんか最初のやり取りの時点で互いが誰かを解かってると思うのだが
この二人は既にそのことは頭に無いようである。
そして二人はにらみ合うようにして同時に口を開いた。

「浩平」「寝雪」

………………

「一文字違う〜」
「じゃあ猫アンドイ…」
「ループするからもう止めて、お兄ちゃん、名雪」

そこでそれまで脇で傍観していた少女が二人を止めに入る。

「あ、みさおも久しぶりだねー。また髪伸びたんだね」

そこでようやく気付いたようにその青い髪の少女、名雪はもう一人
の少女、みさおの髪に触りながらそう言う。

「うん、やっぱり長い方がいいからね」

みさおはそう言いながら身体を回し腰まで届く髪の毛を遠心力で
振ってみる。そうするとさらにその長さが強調される。
 
「おーい、さっさと行くぞ。さすがに一時間も待たされたから寒くて
しょうがない」
「「え?」」

そんな二人のやり取りを無視するかのような声がかけられ、振り向くと
すでにさっきまで名雪と言い合いをしていた少年、浩平は二人から少し
離れた場所まで移動していた。

「あ、まってよー」
「お兄ちゃん、先に行くなんてひどい〜」

二人はそう言いながら小走りで浩平の下へ駆けて行く。
そして浩平は二人が追いついたのを見計らうと再び歩き出した。
行き先はわかってもいるし覚えてもいるから足に迷いは無い。
待っていたのは単に迎えという提案をあっちが出してきた為だ。

「浩平〜」

だがそんなしっかりとした足取りにもかかわらず名雪が不満気な声を
出してくる。

「なんだ?」
「私の名前〜」

そこで初めて気がついた。そういえばまだこの少女を名前で呼んでなかった
事に。
だから呼ぶ。その名前を……

「我が従兄妹の水瀬名雪殿でございましょう」

そのろくでもない答え方に名雪は不満な顔をする。

「なんかまともに呼ばれた気がしない」
「そうか? わがままな奴だな、名雪は」

そこでようやく名雪は満足した顔をして

「よし、いこっ!! お母さんも待ってるよ。それに紹介したい人達
もいるんだ」

浩平とみさおの手を引き走り出す。

「ちょいまてっどわっ」
「わ、ちょっ、名雪!?」

突然手をひかれてつんのめりつつもなんとか名雪についていく二人。


この雪と奇跡の街に新たに物語を紡ぐ二人が足を踏み入れた瞬間だった。




        雪の街の愉快な奴ら
            〜プロローグ〜
       ―――――完――――――








あとがき
ときな「作者のときなでーす」
みさお「半オリジナルで出された折原みさおでーす」
ときな「とりあえずこの話の設定から…
この話はKanonのストーリーが終わった後だけど全員無事、面識あり、
そいでもって全員が学年が一つ下、つまり次に学校始まった時に栞達が
一年、祐一達が二年、舞達が3年と言う事です。ちなみに浩平は二年、
みさおが一年と言う設定です」
みさお「ONEの人達はどうなるの?」
ときな「さあ?」
みさお「さあ、って……」
ときな「出すかもしんないし出さないかもしんない。
基本的にはKanonチーム+折原兄妹でいくつもり」
みさお「私に出番はあるのね」
ときな「おう!!」
みさお「やたっ♪」
ときな「読者の皆様、未熟な腕ですがどうか読んでやって下さい」


 

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